弁証法的行動療法と境界性人格障害(評価)
弁証法的行動療法(Dialectical Behavior Therapy, DBT)とは、1987年にアメリカの行動心理学者マーシャ・リネハン(Marsha M.Linehan)が開発した、境界性人格障害(Borderline Personality Disorder, BPD)に対する認知行動療法です。アメリカ精神医学会による「BPD治療のためのガイドライン」(2001)でBPDに有効な精神療法として推奨されており、ヨーロッパでも注目を集めています。
DBTは、従来の行動療法をベースに修正を加えたもので、自傷行為などを繰り返すBPD患者の治療に効果的であるとされています。Linehan&Koerner(1992)によると、BPDの基本的障害は情動制御障害であるとし、DBTの治療プログラムは情動制御障害を改善することを目指し設定されています。治療には、グループ・スキルトレーニング(週1回2時間30分)、個人精神療法(週1回1時間)、24時間対応の電話相談、スタッフへの個別コンサルテーションやミーティング(週1回3時間)が含まれ、これらを一年間続けます。グループ・スキルトレーニングで、1)マインドフルネス(Mindfulness Skills)、2)対人関係を有効に保つ技能(Interparsonal Effectiveness Skills)、3)情動調節技能(Emotion Regulation Skills)、4)苦悩に耐える技能(Distress Tolerance Skills)の4つの技能を取得します。 アメリカから日本にDBTが輸入されて、まもなく20年になります。CiNii(国立情報学研究所学術情報ナビゲータ)で「弁証的行動療法」を論文検索すると、42件の論文がヒットしました(2016年9月)。弁証的行動療法に関する日本語書籍も、マーシャ・リネハン『境界性パーソナリティ障害の弁証法的行動療法:DBTによるBPDの治療』(誠信書房、2007)、『弁証法的行動療法実践マニュアル:境界性パーソナリティ障害への新しいアプローチ』(金剛出版、2007)などを皮切りに、徐々に増えてきています。しかし、日本の医療機関におけるDBTの活用に関していえば、効果的な実施報告がほとんど確認されておらず、依然として試行段階にとどまっているのが現状です。その背景には、例えば、日本において標準化DBT の治療者の育成システムが整備されていないことや、現行の日本の保険診療の適用内でDBTを行うには患者の経済的負担が大きいことなどの制度上の問題が指摘されています。同時に、DBTにおける重要な要素である「マインドフルネス」は日本独自の精神療法である森田療法に類似していることなどから、DBTと日本人との相性の良さを指摘する専門家もいます。従って、今後いかに日本の医療現場や患者の実情を踏まえた形でDBTを実用化していけるかが課題となっています。 【私の評価】 境界性人格障害の治療法、弁証法的行動療法は大本を辿れば認知行動療法の域下に存在する。それにマインドフルネス冥想療法を付け加えたのが弁証法的行動療法だ。 しかし、こんなものでは境界性人格障害をドラマチックなレベルで治療できない。 絶対的に効果が足りないのだ。 なぜかというと、心のクセ、認知の歪みというものは、 そもそも、すべて当事者の【先天的脳傾向】に依存するからだ。 よって、弁証法的行動療法は境界性人格障害の治療においてあまり効果を発揮しない。 何度も繰り返すが、境界性人格障害の治療において一番重要になってくるのは、薬物療法や運動療法だからである。 【境界性人格障害の治療法のQ&A】 私のQ&Aです↓ https://bpdtreatmentblog.wordpress.com/2016/03/29/20160329%E5%A2%83%E7%95%8C%E6%80%A7%E4%BA%BA%E6%A0%BC%E9%9A%9C%E5%AE%B3%E3%82%88%E3%81%8F%E3%81%82%E3%82%8B%E8%B3%AA%E5%95%8F/ 【関連記事一覧】 ・境界性人格障害の治療における入院療法 ・境界性人格障害の治療におけるメンタライゼーション療法 ・境界性人格障害の治療における認知行動療法 ・境界性人格障害の治療における力動学的精神療法 ・境界性人格障害の治療における薬物療法 境界性人格障害の治療(超まとめ) (←トップに戻る) |
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