境界性人格障害の治療における入院療法(境界性人格障害を治療する場合、当事者を病院へ入院させることは効果的でしょうか?私は非常に危険だと思います。たとえば、自殺を完遂してしまう確率が極めて高いと考えられる患者や暴れて家のモノを破壊したり(たとえば家具や車さえも)、あるいは家族に激しい暴力を振るうなどの問題が生じていれば、入院は必要だと私は思います。
ただし、安易に精神病院に入院させられると境界性人格障害の治療は長引くことになる可能性が高いです。何故かというと、入院するということは自分は境界性人格障害であるという病人意識、障害者意識を本人に直接植えつけてしまうことになりかねないからです。みなさんは洗脳という言葉を聞いたことがありますか?洗脳といえば、オウム真理教のような宗教セクトを連想する方が少なくないかと思いますが、洗脳は常に外部からの刺激が閉鎖された環境で行われます。たとえば、軍隊、宗教施設、そして病院もそうなのです。 たとえば境界性人格障害の治療として精神病院に安易に入院させると、当事者本人は24時間まるまる「あなたは境界性人格障害である」と言い聞かせられ、そして精神科医や看護師から精神障害者として扱われることになります。これを毎日毎日来る日も来る日も365日継続して行っていくと、本人の脳(主に海馬という記憶中枢)に「私は境界性人格障害という精神障害者である」という強烈な印象を植え付けられることになります。これは洗脳といって構いません。そして、このときの記憶は半永久的に持続し、後に行われるたとえば境界性人格障害を本当に治療(治すことができる名医)に出会った際に障壁になります。 何故かというと、患者本人の病人意識が抜けないからです。「どうせ自分は境界性人格障害という精神障害者だから」という意識が本人にあると、治療はうまくいかなくなります。 「病は忘れたときに治る」という至言が古来から存在しますが、境界性人格障害も忘れたときに治ります。※(※比喩でいっていることを踏まえて考えてほしいのですが、これは真実です。) 境界性人格障害の治療における入院療法は、本当に急を要する極めて深刻な事態に本人(娘さん、息子さんなど)が陥っていないかぎり、止めた方がよいでしょう。ことに、思春期(10代)の子供の精神科への入院は、痛烈な記憶としてそしてトラウマ体験として本人の脳(心)に刻み込まれることになります。 【境界性人格障害の治療に対する入院療法の私の評価】 境界性人格障害の傾向を娘や息子、あるいは恋人などが示していても安易な入院治療は絶対にお勧めしない。※ (※自殺企図のような行動化が激しい場合は除く) 精神病院への入院は本人にとって戦争体験のような深刻なトラウマ記憶になりかねないからだ。 入院の可否は当事者の今後の人生にそれがどのような影響を及ぼすかを慎重に考え、選択しないといけない。 【関連記事一覧】 ・境界性人格障害の治療における弁証法的行動療法 ・境界性人格障害の治療におけるメンタライゼーション療法 ・境界性人格障害の治療における認知行動療法 ・境界性人格障害の治療における力動学的精神療法 ・境界性人格障害の治療における薬物療法 境界性人格障害の治療(超まとめ) (←トップへ戻る) |