境界性人格障害治療におけるメンタライゼーション療法境界性人格障害治療においてメンタライゼーション療法(MBT)が用いられる場合があります。一般にメンタライゼーション療法(MBT)とは、長期的な心理療法とは別タイプのものであるとして定義されます。 メンタライゼーション療法の誕生は、BPDを持つ多くの人々が元々、メンタライズ能力(゠想像、思考能力)に貧しいという共通項を保持しているということに基づいて作成されたものです。 メンタライゼーション療法とは境界性人格障害の当事者の思考能力、想像能力が高められるように、その旨に主眼を当てて治療を行っていくというものです。これは、患者自身が「自分自身の考えや信念を客観視」し、そしてそれが「現実的であるかどうか」を自分の力で判断、評価していくと謳(うた)う方法です。 要するにメンタライゼーション療法とは、「自分の思考が、現実的なものであるかどうかを意識的に自己評価することで思考能力を向上させる治療法」であるということができます。 例えば、境界性人格障害を持つ多くの人々は、突然、衝動にかられてリストカットのような自傷行為を行います。 しかしながら、たとえば、メンタライゼーションのセラピストは、なぜそういう自己破滅行為をしてしまうのかを感覚的に患者自身に問うのではなく、なぜ患者本人がそのような自傷行為に走るのか、患者自身に自分の頭で極めて論理的に思考させることを強い、それで強く訓練させます。 :境界性人格障害の患者の多くはその衝動性の高さから客観的に自分自身の行動や言動について、俯瞰視(自分の行動、言動をモニタリング)する能力を欠いている: 例: "私はとにかく怒っているので、とにかく他人が悪い。社会が悪い。あいつが悪い。(゠しかしながら、自分に非は本当に100%ないといえるのだろうか?←境界性人格障害の当事者はこのような相手の立場を想像する能力を欠いていることが多い)」 ↑このような幼稚な二極分化した白黒思考を少しでも、緩和させようとすることが、メンタライゼーション療法の一つの大きな目的になります。 境界性人格障害治療におけるメンタライゼーション療法のもう一つの重要な狙いは、他の人々もまた、自分(゠境界性人格障害の当事者)と同じように「自身の思考、感情、信念、希望や社会的なニーズ、立場を持っており、他の人の精神状態をあなた独自の解釈で判断することは、必ずしも正確ではないかもしれないこと」を認識することです。また、あなたはあなた自身の行動、言動が他の人の精神状態に大きな影響を潜在的に与えうる可能性があることを認識する必要もあります。 MBT(メンタライゼーション療法)の目標は、自分自身と他人の精神状態を認識し、あなた自身についての考えや、また他人についての考えにまでも思案し、他の人たちも自分と同じ人間であり、各々、独自の考え、思考、社会的立場を持っているのだということを確認するために、他の人の気持ちを考え、汲み取るトレーニングをあなた自身が医師や臨床心理士と共に行っていくということです。 当初、MBT(メンタライゼーション療法)は、境界性人格障害の患者が入院した病院において行われる場合があります。(西洋で特に多い) その治療は通常、境界性人格障害と他の入院患者とともにセラピストがグループセッションを毎日開き、その場で個々人各々がディスカッションしていくという形式で構成されます。 MBTのコースは通常約18ヶ月(1年半)必要であるとされています。 いくつかの病院や専門センターは、この期間中は患者は退院することなく入院を継続することを推奨しています。他の病院や他の専門センターに入所した場合、一定期間後に退院を勧められることが少なくないようですが、定期的に病院を訪れ、外来患者としてこの治療を受けても構わないとされています。 【私の評価】 境界性人格障害の治療においてメンタライゼーション療法(MBT)は、ほとんど無意味です。 理由は言わずもがな、境界性人格障害は脳の機能の直接的な異常だからです。 境界性人格障害とは、性格や心の問題では一切ない。 単純な脳の機能障害であるからです。 交通事故で脳を損傷した高次脳機能障害を治療していくのと同じことを境界性人格障害の治療者は考えないといけないわけです。 自分の思考、感じ方、認知様式はすべて脳によって生成されたものであるからです。 【関連記事一覧】 ・境界性人格障害の治療における入院療法 ・境界性人格障害の治療における弁証法的行動療法 ・境界性人格障害の治療における認知行動療法 ・境界性人格障害の治療における力動学的精神療法 ・境界性人格障害の治療における薬物療法 境界性人格障害の治療(超まとめ) (←トップへ戻る) (最終更新:2018/03/24) |
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